~感じて、表現して、ほぐれていく。心のための秋時間~
はじめに
秋といえば、「芸術の秋」。
涼しくなり、空気が澄み、感性が研ぎ澄まされるこの季節は、創作活動や音楽とのふれあいを通じて心を癒すチャンスでもあります。
精神疾患をお持ちの方や、生活の中で感情表現が難しい方にとって、絵や音楽、手作業は言葉にできない思いや気持ちを解放する手段となることがあります。
今回は、訪問看護でも取り入れやすい「芸術の秋」ならではの支援方法についてご紹介します。
創作活動がもたらすメンタルへの効果
1. 自己表現と感情の整理
- 折り紙や塗り絵、ちぎり絵などの創作活動は、自分の内面を形にできる手段です。
- 「言葉ではうまく伝えられないけれど、手を動かすことで落ち着く」「色を選ぶことで気分が整理される」そんな効果を実感される方も多くいます。
2. 集中することで不安が軽減される
- 作品作りに集中することで、過度な思考・不安・強迫的な思考から一時的に距離を置くことができます。
- 特に塗り絵やパズルなどの繰り返し型の作業は、安心感や達成感を得やすいという特性があります。
3. 成功体験と自己肯定感の向上
- 「できた!」という達成感が、自信や意欲を高める第一歩に。
- 他者から作品を認められることで、「自分の価値を感じられる」機会にもなります。
音楽療法的アプローチのすすめ
1. 音楽鑑賞の活用
- クラシック、童謡、映画音楽など、ご本人の思い出や好みに合った音楽を一緒に聴く時間をつくる
- 「この曲、昔よく聞いてた」「懐かしいね」など、記憶の引き出しにも効果的
2. 簡単なリズム活動
- 手拍子・太鼓・鈴などの楽器を使って、軽くリズムに合わせて身体を動かす
- 身体を通じてリズムを感じることで、感情のリリースや落ち着きの促進につながります
3. 歌うことの心理的効果
- 声を出す行為そのものが、呼吸を深め、副交感神経を優位にする効果があります
- 「一緒に歌ってみましょうか?」「鼻歌でも大丈夫ですよ」と、無理なく楽しめる提案を
訪問看護で取り入れるヒント
1. 活動のきっかけはとにかくシンプルに
- 「今日は秋らしい色で塗ってみませんか?」
- 「今の気分に合う曲、いっしょに聴いてみませんか?」
- 完成させることではなく、感じる時間を持つことを目標に
2. 本人の興味や懐かしさを軸に
- 子どもの頃の遊びや、昔好きだった音楽・色・作品などからアプローチ
- 「昔よくやっていた習字をやってみたい」などの声が出れば、その思いを尊重した活動提案を
3. 完成品は共有・記録の材料にも
- できあがった塗り絵や作品は、本人の成長記録・自己表現の成果として活用できます
- ご家族に見せたり、記録に残すことで、本人のやった実感につながります
まとめ
芸術活動は、心に働きかける静かなケアです。
秋という季節の力を借りながら、「今、ここにいる私」をそっと表現できる場所をつくること。
それが、精神科訪問看護においても、その方らしい生き方を支える大切な関わりになるはずです。
無理なく、楽しく、気楽に取り入れられる芸術の秋。
今年は、そんな秋を皆様と一緒に過ごしてみませんか?
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