夏季の訪問看護:服装と衛生管理の工夫

〜暑さにも感染症にも負けない、快適で安全な訪問を目指して〜

はじめに

夏は、訪問看護師にとっても体力を消耗する季節です。強い日差し、高温多湿な気候、室内外の温度差など、体への負担は想像以上です。

さらに、新型コロナウイルス・インフルエンザ・ノロウイルスなど感染症のリスクが夏でも残っていることから、衛生管理の徹底も求められます。

本記事では、夏の訪問看護を安全かつ快適に行うための「服装選びの工夫」と「衛生管理のポイント」についてご紹介します。

夏季の服装:快適さと清潔感の両立がポイント

1. 通気性・吸湿性の高い素材を選ぶ

  • ポリエステル+綿などの速乾性のある素材がおすすめ
  • 汗をかいてもべたつかず、清潔感を保てる
  • 襟付き・ポケット付きのシャツは機能性と信頼感を両立

2. 色は明るめで涼しげに

  • 黒や紺などの濃色は熱を吸収しやすいため、白・ベージュ・水色などを選ぶと◎
  • 見た目にも爽やかで、利用者に与える印象も良好

3. UV対策を忘れずに

  • 帽子やアームカバー、UVカットの上着などで紫外線対策
  • 移動中の体力消耗を防ぎ、日焼けによる体調不良も予防

4. 着替えの準備を

  • 替えのシャツやインナーを車内やバッグに常備
  • 訪問の合間にサッと着替えるだけで、快適さと衛生感を保てる

衛生管理のポイント:夏でも油断禁物!

1. マスク・手指消毒の基本の徹底

  • 夏でもマスクは感染対策の基本(ただし屋外や移動中は熱中症に注意)
  • 訪問ごとの手洗い・手指消毒は必須
  • 汗をかいて湿ったマスクは、早めに交換

2. 汗対策は感染予防にもつながる

  • 汗で湿った服やタオルは、雑菌の温床
  • 吸湿速乾タオルや冷感インナーを活用して快適さと清潔を両立

3. 携帯用衛生グッズを常備

  • ポータブルファンや冷却シートで熱対策
  • アルコールスプレー、除菌シート、制汗剤などを移動カバンに常備

4. 訪問先での清潔対応

  • 訪問先で汗を拭くときは、使い捨てタオルまたは個包装の清拭シートを使用
  • 衣服の臭い・汗染みは利用者への配慮としても重要

現場での工夫例

  •  汗ばむ前に制汗スプレーで事前ブロック
  •  車移動の際はエアコン使用+日除け設置
  •  訪問先の室温チェックと水分摂取の声かけもルーチンに
  •  「今日も暑いですね」といった会話で心理的距離を縮める工夫も大切

まとめ

夏の訪問看護は、ただでさえ体力と神経を使う仕事に、暑さと衛生への対応という二重の負担がかかります。
しかし、服装やグッズを工夫し、衛生対策を習慣化することで、体調不良も感染リスクも大きく減らすことが可能です。

スタッフが快適であることは、そのまま利用者への安心感や信頼にもつながります。
「無理なく」「心地よく」働ける夏の訪問スタイルを、ぜひ実践していきましょう。

花火大会や祭りの音:感覚過敏への配慮

〜夏のイベントを安心して過ごすためにできること〜

はじめに

夏といえば、花火大会や夏祭り、盆踊りといった賑やかなイベントが各地で開催されます。楽しい思い出となるこれらの行事ですが、感覚過敏を持つ方にとっては、強いストレスや不安の原因になることも少なくありません。

特に精神疾患や発達障害、認知症のある方は、大きな音・人混み・光の刺激に対して過敏に反応する傾向があります。この記事では、訪問看護の現場で役立つ、感覚過敏の方への具体的な配慮と対応方法をご紹介します。

感覚過敏とは?

1. 音や光に対して「異常に敏感」

感覚過敏とは、視覚・聴覚・触覚などの感覚に対して、通常よりも強く不快感や苦痛を感じる状態です。とくに夏の花火や祭りでは次のような刺激が問題となります:

  • 大きな爆発音・打楽器・拡声器の声
  • 点滅する光、強い照明
  • 人混みや熱気、汗のにおい など

2. 精神疾患と感覚過敏の関係

  • 統合失調症やうつ病、不安障害では、外部刺激に過敏になることがあります。
  • ASD(自閉スペクトラム症)やADHDを併発している方は、過剰な音や光でパニックやパーソナルスペースの崩壊が起きやすくなります。

夏のイベント時に起こりやすいトラブル

  • 花火の音に驚いて外に飛び出してしまう
  • 騒音に耐えられず、激しい怒り・パニック・混乱を起こす
  • 予期せぬ音(屋台の呼び声、太鼓、群衆の声)で気分が不安定に
  • 過刺激により、その後数日間の体調不良や不眠に繋がる

訪問看護でできる事前の備え

1. イベント予定の把握と周知

  • 花火大会や祭りの日程を事前に調べ、利用者本人・家族・支援者と情報共有
  • 「〇月〇日〇時頃に近くで大きな音がします」といった予測と心構えを伝えるだけでも安心感につながります

2. 環境調整・刺激の遮断

  • イヤーマフ、ノイズキャンセリングイヤホン、遮音材の活用を提案
  • 遮光カーテンやサングラスで視覚刺激を軽減
  • 外出を控え、静かな時間・空間を確保する計画を立てる

3. 代替行動や安心アイテムを用意

  • 音楽・読書・好きな香りなど、安心できるルーティンや刺激を準備
  • 不安時に手に取れる「お守り」「ぬいぐるみ」「触感グッズ」なども有効

4. 家族・支援者への声かけ

  • 「〇〇さんは音に敏感です。花火の時間帯は声かけを増やしましょう」など、見守りと理解の協力を依頼
  • パニック時の対応マニュアル(声をかける言葉・避難場所など)を共有

もし当日パニックが起きたら

  • 無理に止めたり叱ったりせず、安心できる空間へ誘導
  • 「今はうるさいけど、〇分で終わるよ」など、時間の見通しを示す
  • 水分補給・深呼吸など、落ち着ける声かけを心がける
  • 必要であれば、主治医や家族に状況を報告し、対応を相談

まとめ

感覚過敏の方にとって、花火大会や夏祭りは「楽しいイベント」ではなく、「乗り越えるべき負荷」になることもあります。

しかし、事前の準備や配慮、周囲の理解があれば、不安を最小限に抑え、安全に過ごすことが可能です。訪問看護の中でできるちょっとした一言や工夫が、ご本人の安心につながります。

この夏、すべての人が自分らしく過ごせるよう、私たちの役割が大切です。

夏の睡眠障害:日照時間と体内リズムの関係

〜眠れない、起きられない…夏特有のリズムの乱れにどう対処するか〜

はじめに

夏になると、「なかなか寝つけない」「朝早く目が覚めてしまう」「昼間に眠くてぼーっとする」といった睡眠のトラブルを感じる方が増えてきます。特に、精神疾患をお持ちの方は、季節による体内リズムの変化に敏感であり、睡眠障害が気分の不安定さや体調悪化につながることもあります。

この記事では、夏の「日照時間」が私たちの体内時計(概日リズム)にどのような影響を与えるのか、また、精神的な不調を悪化させないための睡眠対策について、訪問看護の視点も交えながらご紹介します。

夏の睡眠障害と「日照時間」の関係

1. 日照時間が長くなることで起こるリズムの乱れ

夏は日の出が早く、日没が遅くなるため、自然光を浴びる時間が長くなります。これは一見良いことのように思えますが、次のような影響を及ぼします。

  • 朝早く光を浴びることで睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が早まる
  • 夕方になっても明るいため、脳が「まだ昼間」と錯覚して眠くなりにくくなる
  • 結果として、「早朝覚醒」「寝つきの悪さ」などの睡眠障害が生じやすくなる

2. 精神疾患との関連性

  • うつ病や双極性障害の方は、体内時計の乱れによって、気分の変動が激しくなることがあります。
  • 統合失調症の方では、睡眠の乱れが幻覚・妄想の悪化を招く可能性も。
  • 睡眠がうまくとれないことで、昼夜逆転や生活リズムの崩壊が起こりやすくなります。

睡眠を整えるための具体的な対処法

1. 朝の光を“コントロール”する

  • カーテンを遮光性の高いものにする
  • 早朝に日差しが差し込まないよう、寝室の向きを工夫する
  • 起床時間の1時間前から光が入る仕組み(タイマーライトなど)を利用するのも効果的

2. 夜の「入眠スイッチ」を作る

  • 寝る1時間前からはスマホやTVの画面を控える(ブルーライト対策)
  • お風呂・音楽・ストレッチなど、「夜の習慣」を取り入れることで副交感神経を優位にする
  • エアコンや扇風機で室温を快適な睡眠環境を整える

3. 日中の活動とリズムを意識する

  • 朝食をしっかり摂ることで体内時計を“朝モード”にリセット
  • 午前中に軽い運動や日光浴(10〜15分)を行うと、睡眠の質向上につながる
  • 昼寝は15〜20分以内にとどめることで、夜の睡眠への影響を抑える

訪問看護でのサポートのポイント

  • 利用者の睡眠時間・質・日中の様子などを観察し、リズムの乱れを早期に発見
  • 簡単な睡眠記録表や「起床時間だけは固定しましょう」などの目標設定も有効
  • 医師に相談の上、必要に応じて睡眠薬やメラトニン作動薬の調整を支援
  • 「眠れない=不安・焦り」になりがちな利用者には、「焦らなくて大丈夫」と声をかけることが大切

まとめ

夏の長い日照時間は、気づかぬうちに心身のリズムに影響を与え、睡眠の質やメンタルバランスの乱れを引き起こします。

訪問看護の現場では、睡眠状態の把握と日中活動の提案、環境調整の支援が重要な役割となります。
睡眠が安定すれば、心も体も自然と整っていきます。
ぜひ、この夏のケアに役立ててください。

夏バテとメンタルヘルス:食欲不振への対応

〜「食べられない」が心にも影響する理由とその工夫〜

はじめに

暑さが続く夏は、身体だけでなく心にも影響を与える季節です。特に、食欲不振(食べられない、食が進まない)は「夏バテ」の代表的な症状ですが、精神的な不調を招く一因にもなり得ます。

精神疾患をお持ちの方にとっては、栄養の偏りが気分の波や疲労感を悪化させるリスクもあるため、早めの対応が大切です。

今回は、夏の暑さによる食欲不振とメンタルヘルスの関係、そして実践的な栄養補給の工夫についてご紹介します。

食欲不振とメンタルヘルスの関係

1. 栄養不足が「心のガソリン切れ」に

脳の働きにはブドウ糖、ビタミン、鉄分、タンパク質などの栄養素が欠かせません。食事が不規則になると、集中力の低下・不安感の増加・抑うつ気分など、精神症状の悪化につながる可能性があります。

2. 体力低下は意欲の低下にも

暑さで汗をかきすぎたり、十分に食べられなかったりすると、倦怠感や動きたくない感覚が強くなります。それが長引くと「何もしたくない」「横になっていたい」という気分の落ち込みを助長することもあります。

3. 「食べたくない」が孤立感につながることも

食事を拒否する状態が続くと、家族や支援者とのコミュニケーションが減る場合があります。特に独居の方では、「一人で食べるのが寂しい」「誰にも気づかれずに体調が悪化した」ということも。

訪問看護の現場でよくある声

  • 「暑くて何も食べたくない。冷たい水だけ飲んでいる」
  • 「そうめんばかりになって、栄養が偏っている気がする」
  • 「食事の支度が面倒になってきて、1日1食しか食べていない」

こうした声は、夏の訪問看護の現場ではよく聞かれます。そのため、無理せず続けられる工夫を一緒に見つけていくことが大切です。

食欲がないときの栄養補給の工夫

1. 少量・高栄養の工夫をする

  • ゼリー飲料や栄養補助食品(エネルギーゼリー、バランス栄養食など)
    → 食事が進まないときの代替に。冷やすとさらに食べやすくなります。
  • たんぱく質を含む飲み物(豆乳、ヨーグルトドリンク、プロテイン)
    → 飲み物として取り入れられるので、食事が苦手でも摂りやすい。

2. 見た目と温度で「食べたい」を引き出す

  • 色とりどりの野菜やフルーツを取り入れる(トマト、キュウリ、スイカなど)
  • 冷たい料理(冷製スープ、冷やし茶漬け、冷やしうどんなど)を活用する

3. 食事の「回数」にこだわらない

  • 1日3食にこだわらず、1日5~6回の小分けスタイルでもOK
    → 負担を減らし、少しずつエネルギーを取り入れる工夫が重要です。

4. 「一緒に食べる」ことの力を活かす

  • 訪問看護の時間帯に合わせて「一口だけ食べてみませんか?」と提案する
  • 家族や支援者と一緒に食卓を囲むことで、食事の意欲が高まるケースもあります

訪問看護でできるサポート

  • 食事内容や摂取状況の確認と、必要に応じた栄養士や主治医との連携
  • 食べられそうなメニューの提案(レシピカードや画像の活用も効果的)
  • 体重の変化、脱水や栄養失調の兆候(皮膚の乾燥・浮腫・口腔の状態など)の観察
  • 「無理に食べさせる」ではなく、「一口でも食べてみよう」という寄り添いの姿勢

まとめ

夏の食欲不振は、ただの「夏バテ」ではなく、メンタルの不調の引き金にもなります。
無理に食べさせることなく、「少しでも体が楽になる食べ方」「続けられる食習慣」を一緒に見つけていくことが、精神科訪問看護においてとても大切です。

心と体をつなぐ“食”のケアで、この夏を少しでも健やかに過ごしていただけますように。

【お知らせ】若年がん患者等の在宅療養支援助成事業について

~土浦市にお住まいの40歳未満のがん患者さま・ご家族へ~

皆さま、こんにちは。
本日は、土浦市より実施されている「若年がん患者等在宅療養支援助成事業」について、当ステーションより情報提供いたします。

この制度は、40歳未満で在宅療養をされるがん等の患者さまが、住み慣れたご自宅で安心して過ごせるよう、訪問介護・訪問入浴介護・福祉用具の利用費の一部を助成するという内容です。

対象となる方

以下すべてに該当する方が対象です。

  1. 土浦市に居住し、住民登録のある方
  2. サービス利用時点で40歳未満の方
  3. 末期がん等で、医師から介護保険の要介護状態と同等と診断された方

助成対象となるサービス

1. 訪問介護

入浴・排せつ・食事などの介助や、家事援助(掃除・洗濯など)

2. 訪問入浴介護

専用の浴槽を持ち込んで行う入浴サービス(看護職員1名+介護職員2名で対応)

3. 福祉用具のレンタル

車いす・電動ベッド・歩行器・手すりなど、必要な用具の貸与

4. 福祉用具の購入

入浴補助用具・腰掛便座・簡易浴槽など

※「いばらきがん患者トータルサポート事業(県)」との併用は可能です。

助成内容(例)

  • 利用料に対して9割を助成(生活保護受給者は10割)
  • 上限:月63,000円(生活保護受給者は70,000円)

<例> 訪問入浴介護(週2回、月8回利用)の場合

1回12,500円 × 8回 = 100,000円
→ 100,000円 × 0.9 = 90,000円 → しかし上限が63,000円 → 助成額は63,000円

利用までの流れ

  1. 交付申請
     → 医師意見書を添えて土浦市健康増進課へ提出
  2. サービス利用・自己負担で支払い
     → 利用分の領収書や明細を保管
  3. 実績報告・請求
     → 毎月報告し、市が審査・助成額を通知
  4. 助成金の振込
     → 指定口座へ助成金が振り込まれます

ご相談・お問い合わせ先

土浦市 健康増進課(健康支援係)までお気軽にご相談ください。

📞 電話番号:029-826-3471

📄 詳細はこちら
👉 土浦市公式サイト:若年がん患者等在宅療養支援助成事業ページ

おわりに

介護保険の対象とならない40歳未満の方が、自宅で安心して療養生活を送るために
この制度が、少しでも負担軽減と安心につながることを願っております。