〜夏のイベントを安心して過ごすためにできること〜
はじめに
夏といえば、花火大会や夏祭り、盆踊りといった賑やかなイベントが各地で開催されます。楽しい思い出となるこれらの行事ですが、感覚過敏を持つ方にとっては、強いストレスや不安の原因になることも少なくありません。
特に精神疾患や発達障害、認知症のある方は、大きな音・人混み・光の刺激に対して過敏に反応する傾向があります。この記事では、訪問看護の現場で役立つ、感覚過敏の方への具体的な配慮と対応方法をご紹介します。
感覚過敏とは?
1. 音や光に対して「異常に敏感」
感覚過敏とは、視覚・聴覚・触覚などの感覚に対して、通常よりも強く不快感や苦痛を感じる状態です。とくに夏の花火や祭りでは次のような刺激が問題となります:
- 大きな爆発音・打楽器・拡声器の声
- 点滅する光、強い照明
- 人混みや熱気、汗のにおい など
2. 精神疾患と感覚過敏の関係
- 統合失調症やうつ病、不安障害では、外部刺激に過敏になることがあります。
- ASD(自閉スペクトラム症)やADHDを併発している方は、過剰な音や光でパニックやパーソナルスペースの崩壊が起きやすくなります。
夏のイベント時に起こりやすいトラブル
- 花火の音に驚いて外に飛び出してしまう
- 騒音に耐えられず、激しい怒り・パニック・混乱を起こす
- 予期せぬ音(屋台の呼び声、太鼓、群衆の声)で気分が不安定に
- 過刺激により、その後数日間の体調不良や不眠に繋がる
訪問看護でできる事前の備え
1. イベント予定の把握と周知
- 花火大会や祭りの日程を事前に調べ、利用者本人・家族・支援者と情報共有
- 「〇月〇日〇時頃に近くで大きな音がします」といった予測と心構えを伝えるだけでも安心感につながります
2. 環境調整・刺激の遮断
- イヤーマフ、ノイズキャンセリングイヤホン、遮音材の活用を提案
- 遮光カーテンやサングラスで視覚刺激を軽減
- 外出を控え、静かな時間・空間を確保する計画を立てる
3. 代替行動や安心アイテムを用意
- 音楽・読書・好きな香りなど、安心できるルーティンや刺激を準備
- 不安時に手に取れる「お守り」「ぬいぐるみ」「触感グッズ」なども有効
4. 家族・支援者への声かけ
- 「〇〇さんは音に敏感です。花火の時間帯は声かけを増やしましょう」など、見守りと理解の協力を依頼
- パニック時の対応マニュアル(声をかける言葉・避難場所など)を共有
もし当日パニックが起きたら
- 無理に止めたり叱ったりせず、安心できる空間へ誘導
- 「今はうるさいけど、〇分で終わるよ」など、時間の見通しを示す
- 水分補給・深呼吸など、落ち着ける声かけを心がける
- 必要であれば、主治医や家族に状況を報告し、対応を相談
まとめ
感覚過敏の方にとって、花火大会や夏祭りは「楽しいイベント」ではなく、「乗り越えるべき負荷」になることもあります。
しかし、事前の準備や配慮、周囲の理解があれば、不安を最小限に抑え、安全に過ごすことが可能です。訪問看護の中でできるちょっとした一言や工夫が、ご本人の安心につながります。
この夏、すべての人が自分らしく過ごせるよう、私たちの役割が大切です。