〜「みんなが集まる季節」に感じる孤独・プレッシャーへの寄り添い〜
はじめに
8月といえば、「お盆」の季節です。家族や親戚が集まる機会が増え、久しぶりの再会や会話に心が温まる場面も多い一方で、精神的な負担や緊張、孤独を感じる方も少なくありません。
特に精神疾患を抱える方にとっては、お盆の“非日常”が生活リズムの乱れや不安の引き金になることもあります。
この記事では、訪問看護の視点から「お盆時期に起こりやすいメンタルの変化」と「それに対する具体的なケア方法」についてご紹介します。
お盆シーズンに起こりやすい心の変化
1. 「帰省できない/しない」ことへの孤独感
- 実家に戻ることが難しい、家族関係に距離がある、などの事情から“ひとりのお盆”を過ごす利用者も多くいます。
- SNSやテレビで「家族団らん」の映像を見ることで、孤独や疎外感を強く感じてしまうことがあります。
2. 家族との再会によるプレッシャー・緊張
- 「ちゃんとして見られたい」「元気にふるまわなければ」と無理をして疲弊してしまうケースも。
- 家族との会話の中で、病気や生き方についての無意識な“干渉”や“否定”に傷ついてしまうことも。
3. 非日常による生活リズムの乱れ
- 家族が在宅になったり、来客が増えることで普段のペースが乱れやすくなる
- 外食や移動が続くことで、睡眠や服薬のリズムが崩れやすい
訪問看護の現場でできる支援
1. 「いつも通りの関わり」が安心につながる
- 訪問日程を大きくずらさず、「お盆もいつも通りに訪問しますよ」と伝えるだけで安心感を得られるケースもあります。
- “非日常の中にある日常”の提供が精神的な安定を支える大きな鍵になります。
2. 気持ちの揺れに気づき、そっと寄り添う
- 「家族とは会えそうですか?」「お盆はどんな風に過ごす予定ですか?」とさりげない会話で心の状態を把握
- 急に涙を流したり、話題を避ける様子があれば、無理に聞き出さず、安心できる話題に切り替える配慮を
3. 体調・生活リズムの確認と調整
- 普段より寝不足・疲労・胃腸の不調などが出やすい時期です
- 睡眠・食事・服薬の乱れが見られる場合は、記録やタイマー利用などのサポートを提案することも有効
ご家族への支援・声かけのポイント
- 「お会いできるのを楽しみにしていた」「元気そうで安心した」といった肯定的な言葉で始めることが大切
- ご本人の前で病状・服薬・通院についての議論が加熱しすぎないよう配慮を
- ご家族が不安や負担を抱えている場合は、相談窓口や支援制度の情報提供を行いましょう
まとめ
お盆の時期は、見えにくい「心の揺れ」が多く起こりやすいタイミングです。
大切なのは、「特別なことをしようとする」よりも、普段通りの関わりを丁寧に行うこと。
訪問看護だからこそできる“寄り添い”で、利用者の方が「安心してこの時期を乗り切れた」と思えるようなサポートを届けていきましょう。