~着るものの違和感が、心の不安につながらないために~
はじめに
涼しい風が吹き始め、そろそろ衣替えの季節。
しかし、私たちが何気なく行う衣替えも、感覚過敏や衣類へのこだわりが強い方にとっては大きなストレスになることがあります。
「チクチクして落ち着かない」「タグが気になって着替えたがらない」こうした反応には理由があります。
この記事では、秋の衣類による不快感をできるだけ軽減し、その人にとっての快適を守る工夫を訪問看護の視点からお伝えします。
感覚過敏と衣替えのストレスとは?
1. 素材の変化による違和感
- 夏服から秋冬の服へと切り替わると、肌ざわり・重さ・通気性が大きく変わります。
- 感覚過敏のある方は、布の質感・縫い目・タグ・締め付け感などに強く反応し、不安や混乱につながることもあります。
2. 「決まった服しか着られない」ことも
- 「この服しか着たくない」「毎日同じ服じゃないと落ち着かない」といったこだわりは、自分の世界の安心材料のひとつである場合があります。
- 無理に新しい衣類に変えようとすると、パニックや拒否反応を招くこともあるため注意が必要です。
秋の衣類選び・切り替えのポイント
1. 素材は「やわらかく・軽く・通気性のよいもの」を優先
- 綿・モダール・テンセルなどの柔らかくて摩擦の少ない素材が安心されやすい
- ウール・ポリエステル混合などは、チクチク感が強く避けられる傾向あり
- 裏地なし・タグなし・平縫いタイプの衣類を選ぶとより快適に
2. 薄手+重ね着のスタイルがおすすめ
- 一気に厚手の服に変えるより、薄手の長袖+カーディガンなどのレイヤードで調整
- 「気温に合わせて1枚ずつ脱げる」スタイルが、本人の快適を守りやすい
3. 衣類の慣れを大切に
- いきなり新しい服に変えるのではなく、夏服と秋服を少しずつ混在させて慣らす期間を設ける
- 「部屋では夏服、外出時だけ秋服」といった段階的な切り替えが◎
- 本人のお気に入りの色・柄を選ぶことも、切り替えのきっかけになります
訪問看護でできる支援と声かけ
1. 衣類の不快感を観察する視点
- 着替えを嫌がる、落ち着かない様子、かゆみを訴えるなどがあれば、素材やフィット感に原因がないかを確認
- 「最近の服、気持ちよく着られてますか?」とさりげない確認の声かけを
2. ご家族・支援者との情報共有
- 本人が服にこだわる場合、「この服だけは残しておいてください」といった配慮を提案
- 新しい服を選ぶ際には、素材や肌ざわり重視の視点を共有
- 「肌触りが合わなくて不安定になることもあるんです」と事前に説明することで誤解を防ぐ
ご本人の快適を尊重することが第一歩
衣服は毎日肌に直接触れるものです。
だからこそ、その人の感覚に合った服選びは、精神的な安定にも大きな意味を持ちます。
「本人が落ち着ける服」「安心できる服」を中心に、季節の変化に無理なく付き合っていく。
訪問看護ステーションharu style・グループホームなつでは、その小さな変化に寄り添う支援を大切にしていきたいと思います。