冬の訪問時の服装:防寒と動きやすさの両立

~寒さに負けず、あたたかく、動きやすく~

はじめに

冬の訪問看護は、寒さとの戦いでもあります。
外は冷たい風、室内は暖房が効いている場所もあれば、そうでないご家庭も。
また、車での移動→徒歩→訪問先でのケアと、体温変化に対応しながら柔軟に動ける服装が求められます。

本記事では、冬季の訪問における看護師の服装選びのポイントと、機能性を損なわない防寒対策についてご紹介します。

冬季訪問でよくあるお悩み

  • 暖かい服を着ると動きづらくてケアがしにくい
  • 汗をかいて、訪問先で体が冷えてしまった
  • 訪問先によっては室温が低く、指先や足元が冷えて感覚が鈍る
  • 厚着をすると、見た目が重くなり、清潔感や信頼感に欠けるように感じる

こうした声は多くの訪問看護師が経験しています。
だからこそ、「見た目」「動きやすさ」「体温調節」のバランスが取れた服装が重要なのです。

冬の訪問に適した服装のポイント

1. インナー:温かくても「蒸れにくさ・吸湿性」を重視

  • ヒートテック素材や吸湿発熱インナーがおすすめ
  • 発汗による冷えを防ぐため、速乾性・通気性のあるものを選びましょう
  • 長袖でもフィット感のあるものを選ぶと、重ね着しても動きやすい

2. 中間着:動きを妨げない軽量防寒

  • フリースや薄手のニット、ダウンベストなどを重ねることで、脱ぎ着で体温調整が可能
  • ストレッチ性のある素材や、静電気防止加工のものが快適です
  • 「重ねるほど動きづらい」と感じる方には、裏起毛のストレッチスクラブも人気です

3. アウター:軽くて風を通さないものを

  • 防風・撥水機能のある中綿入りジャケットウィンドブレーカーなど
  • 脱ぎ着しやすく、ファスナー開閉やポケット付きのものが便利
  • 車移動が多い場合は、着脱が簡単なものを選ぶと◎

4. ボトムス:動きやすさ+保温性

  • 裏起毛のストレッチパンツは温かく、しゃがむ・立つなどの動作もスムーズ
  • 静電気対策として、柔らかく帯電しにくい素材を選ぶのもポイント

プラスαの防寒アイテム

  • ネックウォーマー・マフラー(室内で外せるタイプ)
  • 手袋・ハンドウォーマー(訪問先で外しやすいもの)
  • 厚手ソックス・インソール・靴用カイロで足元の冷え対策
  • カイロ(貼るタイプ)を背中や腰に貼ると全身が温まりやすい

室内との気温差に注意!冷え対策とマナーの両立

  • 訪問先によっては暖房が入っていないケースもあります
  • 上着を脱ぐかどうかの判断は、利用者の室温・会話の雰囲気を見ながら臨機応変に
  • 玄関先で「失礼いたします、上着を脱いでもよろしいですか?」など、一言添えると印象も良く、信頼感につながります

まとめ

冬の訪問看護は、寒さだけでなく、温度差・湿度・動きやすさといった複数の要素を考慮した服装が必要になります。

「防寒」と「機能性」をうまく両立させることで、体調を守りつつ、利用者との関係性も心地よいものに保てます。

ぜひご自身のスタイルや訪問先の特性に合わせて、動けて冷えにくい冬の訪問看護スタイルを見つけてください。

インフルエンザ予防と精神疾患:ワクチン接種の重要性

~感染予防は、心の安定にもつながります~

はじめに

毎年秋から冬にかけて流行する「インフルエンザ」。
高熱や倦怠感など身体的な症状が中心の感染症として知られていますが、精神疾患を持つ方にとっては、心身両面に影響を及ぼすリスクがあるため、特に注意が必要です。

この記事では、精神疾患をお持ちの方やそのご家族、支援者に向けて、インフルエンザワクチンの重要性と接種時の注意点を解説します。

なぜ精神疾患を持つ方にとって、インフルエンザの予防が重要なのか?

1. 感染による体調悪化が精神状態にも影響

  • インフルエンザにかかると、高熱・倦怠感・脱水・睡眠障害などが生じやすく、
     それが引き金となって、気分の落ち込み・不安・幻覚・妄想の再燃を招くケースも少なくありません。

2. 環境の変化に弱い方が多い

  • 入院や隔離、服薬スケジュールの変更といった生活リズムの乱れが、症状の悪化や再発を引き起こすリスクに。

3. 基礎疾患を抱えているケースも

  • 精神疾患と併せて、糖尿病・高血圧・肥満・生活習慣病などを抱えている方は、重症化しやすいハイリスク群に該当する場合があります。

インフルエンザワクチン接種のメリット

  • 発症リスクの軽減(約60%前後)
  • 重症化や入院の予防(とくに高齢者・基礎疾患のある方に有効)
  • 感染拡大の抑制(家庭内や施設内でのクラスター防止)
  • 安心感による精神的安定

「感染しないこと」だけでなく、感染したとしても重くならないための対策として、ワクチン接種は非常に重要な意味を持ちます。

接種にあたっての注意点と対応策

1. ワクチンに対する不安・抵抗感への配慮

  • 注射に対する恐怖や、医療機関への苦手意識がある方には、
    「できるだけ短時間で済ませる」「付き添いで安心感を与える」「事前に流れを説明する」などの工夫を。

2. 副反応への備えと説明

  • 発熱・注射部位の腫れ・だるさなどの軽い副反応が出ることがあります。
  • あらかじめ「翌日は少し体がだるくなるかもしれませんが、数日で落ち着きます」と伝えておくことで不安を軽減できます。

3. 接種スケジュールの調整

  • 他の注射や治療スケジュールとの兼ね合いに注意。
  • 精神科主治医と相談のうえ、接種日や時間帯、体調を考慮したプランを立てることが重要です。

訪問看護でできるサポート

  • ワクチンの案内・日程調整・医師との連携サポート
  • ご本人への説明支援(リーフレットや口頭でのフォロー)
  • ご家族への「接種を勧める意義」の共有
  • 接種後の体調確認と副反応の観察、必要時の医療連携

ご家族・支援者の皆さまへ

ご本人がワクチン接種に対して不安や抵抗を感じる場合、無理に勧めるのではなく、
「あなたの体調が悪くなってしまうと、周りもとても心配なんですよ」
「元気に過ごすために、できる対策をしていきましょうね」
といった共感ベースの声かけが有効です。

また、ご家族や支援者ご自身も接種しておくことで、感染リスクの低減と安心感の共有につながります。

まとめ

インフルエンザワクチンは、精神的な安定と生活の継続を守るための大切な予防策のひとつです。
訪問看護の中でも、「接種をする・しない」の判断だけでなく、不安の軽減、情報提供、環境調整などの包括的な支援が求められます。

ひとりでも多くの方が、安心して秋冬を過ごせるように
小さな声にも耳を傾けながら、予防の一歩を一緒に踏み出していきましょう。

ハロウィンをきっかけにした“関わり”の工夫:季節行事でつながる支援

~「イベント」で終わらせない、心の距離を近づける時間に~

はじめに

近年、日本でもすっかり定着したハロウィン。
「仮装」や「お菓子」「飾り付け」など、視覚的にも楽しいイベントとして、多くの施設や家庭でも取り入れられるようになってきました。

しかし、ハロウィンはただの年中行事にとどまらず、利用者の感情表現や人とのつながり、季節感を取り戻すきっかけとしても有効です。

今回は、訪問看護の現場でも気軽に取り入れられる、ハロウィンを心の交流ツールとして活かす支援アイデアをご紹介します。

ハロウィンを活用する意義とは?

1. 「季節を感じる」ことで生活に彩りが生まれる

  • 日々の生活に季節感を取り入れることは、時間の流れや社会とのつながりを実感する手段となります。
  • 秋の行事としてのハロウィンは、色や形・においなどを通して、五感を刺激するきっかけにもなります。

2. 気軽に楽しめる「非日常」体験

  • ちょっとした飾りや小道具で、いつもと違う体験を共有できるハロウィンは、利用者の好奇心や会話を引き出しやすい機会です。
  • 特に、ルーティンが強い方や人と関わることが苦手な方にとって、自然な形で交流が生まれる可能性があります。

訪問看護でのハロウィン支援アイデア

1. 【飾り付け支援】視覚で楽しむ空間づくり

  • かぼちゃやおばけ、コウモリなどのモチーフを使った折り紙・ちぎり絵・ぬり絵を一緒に作成
  • ご本人のお部屋に小さなハロウィン飾りを一緒に置くことで、季節感と達成感を得られる
  • 「この色が好き」「ここに飾ろうか」といった会話のきっかけ作りにも

2. 【仮装・小道具活用】非日常で心の開放を促す

  • フル仮装でなくてもOK。カチューシャ・帽子・マント・シールなどの小物で十分雰囲気を楽しめます
  • ご本人にも無理なく、「これ、つけてみませんか?」「一緒に写真を撮りましょうか?」と軽やかな提案
  • 職員が仮装して訪問するだけでも笑顔が生まれやすくなります

3. 【お菓子づくり・食支援】五感で楽しむ関わり

  • 市販のお菓子に手作りのラッピングを加えるだけで特別感がアップ
  • クッキーにかぼちゃ型のスタンプを押す・チョコペンで顔を描くなど、創作+味覚で喜びを共有
  • 嚥下や食事制限がある方には、ゼリーやプリンなど個別に配慮した工夫

支援のポイント:大切なのは「一緒に楽しむ」こと

  • 「完成させること」や「上手に作ること」よりも、過程を共有することに意味があります
  • ご本人が関わりを拒む場合でも、無理強いせず、見る・聞く・触れるだけでもOK
  • ハロウィンをきっかけとして、普段とは少し違う自分を楽しめる空間づくりを心がけましょう

ご家族・支援者との連携も効果的

  • ご家族に「少しだけ飾りつけを一緒にしてみませんか?」と声をかけることで、家庭内のコミュニケーションが広がる
  • 支援者同士で「この飾りがよかった」「〇〇さんが笑ってくれた」など、活動の成功体験を共有することが次の工夫につながります

まとめ

ハロウィンは、笑顔と変化を自然に引き出す力のあるイベントです。
その魅力を活かして、利用者の方にとっての「気分転換」「表現の場」「つながりの入り口」となるような支援を、訪問看護の中でもぜひ取り入れてみましょう。

派手なイベントでなくてかまいません。
小さなきっかけから始まる対話や笑顔の積み重ねが、安心や自信の芽を育ててくれます。

10月の睡眠管理:夜長と気温低下がもたらす睡眠リズムの乱れに対応する

~秋の夜、ぐっすり眠るためのちいさな工夫~

はじめに

10月は「秋の夜長」とも言われ、ゆったりとした夜の時間を楽しめる季節ですが、
同時に「なぜか寝つけない」「夜中に目が覚める」「朝がつらい」といった睡眠の乱れが目立つ時期でもあります。

その原因の一つは、気温の低下や日照時間の変化によって体内リズムが乱れやすくなること
特に精神疾患をお持ちの方にとっては、こうした変化が生活全体のバランスや気分の安定にも影響するため、早めの対策が大切です。

この記事では、10月に起こりやすい睡眠の乱れと、その改善策について、照明・就寝前の習慣・服装など、実践的なポイントをご紹介します。

秋に起こりやすい睡眠トラブルとは?

1. 昼夜の気温差による体温調節の乱れ

  • 日中は暖かいのに、夜は急に冷え込むこの寒暖差が、体のリズムを乱し、自律神経を刺激します。
  • 結果として「寝つきにくい」「夜中に寒くて目が覚める」「朝スッキリ起きられない」といった不調が起こりやすくなります。

2. 日照時間の減少によるメラトニン分泌の乱れ

  • メラトニン(睡眠ホルモン)は暗くなることで分泌が始まるため、
    日の入りが早まる秋は、夕方以降の眠気が強くなったり、逆に夜間の覚醒が続いたりとリズムの乱れにつながることがあります。

3. 「夜が長いこと」による心理的影響

  • 静かな夜の時間が増えることで、考えごとや不安が強くなる傾向も。
  • 特にうつ病や不安障害の方では、夜間の過覚醒(神経が高ぶって眠れない状態)が顕著になることもあります。

睡眠リズムを整えるための3つの工夫

1. 【照明】朝と夜の光環境を見直す

  • 起床後はすぐにカーテンを開けて自然光を浴びる
  • 曇りの日や室内が暗い場合は、白色ライトや光目覚まし時計を活用するのもおすすめ
  • 就寝1時間前には暖色系の間接照明や常夜灯に切り替えて、脳を夜モードに

2. 【習慣】就寝前の「おやすみルーティン」をつくる

  • 例:白湯を飲む → ストレッチ → 好きな音楽をかける → 明かりを落とす
  • 毎日同じパターンを繰り返すことで、これをすると眠る時間という意識づけが自然とできるように
  • 就寝前のスマホやテレビは、なるべく控えてブルーライトをカット

3. 【服装・寝具】寒暖差を防ぐ秋仕様への調整

  • パジャマは吸湿性・保温性のある長袖・長ズボンを基本に
  • 足元や首回りを冷やさないよう、靴下・ネックウォーマー・薄手毛布の併用も◎
  • 寝具は通気性と保温性のバランスが取れたものに切り替えを。夏用シーツのままでは冷えの原因に。

訪問看護での支援のヒント

  • 「最近、夜はぐっすり眠れていますか?」と睡眠の状態を気軽に確認する
  • 睡眠日誌の記録を勧めることで、リズムの乱れや寝つきの傾向を把握しやすくなる
  • ご本人の安心スイッチ(お気に入りの毛布・香り・音楽など)を確認して、入眠ルーティンのサポートにつなげる
  • 必要に応じて、主治医に相談して服薬のタイミングや種類の調整も検討

ご家族・支援者へのアドバイス

  • 睡眠に関する悩みは気づきにくく、話しにくいテーマであるため、
    「夜中に起きていないか」「表情に疲れが出ていないか」といった生活の中での観察が大切
  • 寝具の状態や室温を一緒に確認し、「これでいいのかな?」と一緒に試行錯誤する姿勢を持つことも、支えになります

まとめ

10月は、気温・光・心理的な環境が大きく変化する季節です。
こうした「目には見えにくい変化」が、睡眠という生活の土台に静かに影響を与えることを知っておくことが、メンタルケアの第一歩になります。

「眠れていますか?」という何気ない問いかけから、その人に合った生活リズムや安心できる就寝環境づくりを一緒に考えていくことが大切です。

「芸術の秋」で心を豊かに:創作活動や音楽療法のすすめ

~感じて、表現して、ほぐれていく。心のための秋時間~

はじめに

秋といえば、「芸術の秋」。
涼しくなり、空気が澄み、感性が研ぎ澄まされるこの季節は、創作活動や音楽とのふれあいを通じて心を癒すチャンスでもあります。

精神疾患をお持ちの方や、生活の中で感情表現が難しい方にとって、絵や音楽、手作業は言葉にできない思いや気持ちを解放する手段となることがあります。

今回は、訪問看護でも取り入れやすい「芸術の秋」ならではの支援方法についてご紹介します。

創作活動がもたらすメンタルへの効果

1. 自己表現と感情の整理

  • 折り紙や塗り絵、ちぎり絵などの創作活動は、自分の内面を形にできる手段です。
  • 「言葉ではうまく伝えられないけれど、手を動かすことで落ち着く」「色を選ぶことで気分が整理される」そんな効果を実感される方も多くいます。

2. 集中することで不安が軽減される

  • 作品作りに集中することで、過度な思考・不安・強迫的な思考から一時的に距離を置くことができます。
  • 特に塗り絵やパズルなどの繰り返し型の作業は、安心感や達成感を得やすいという特性があります。

3. 成功体験と自己肯定感の向上

  • 「できた!」という達成感が、自信や意欲を高める第一歩に。
  • 他者から作品を認められることで、「自分の価値を感じられる」機会にもなります。

音楽療法的アプローチのすすめ

1. 音楽鑑賞の活用

  • クラシック、童謡、映画音楽など、ご本人の思い出や好みに合った音楽を一緒に聴く時間をつくる
  • 「この曲、昔よく聞いてた」「懐かしいね」など、記憶の引き出しにも効果的

2. 簡単なリズム活動

  • 手拍子・太鼓・鈴などの楽器を使って、軽くリズムに合わせて身体を動かす
  • 身体を通じてリズムを感じることで、感情のリリースや落ち着きの促進につながります

3. 歌うことの心理的効果

  • 声を出す行為そのものが、呼吸を深め、副交感神経を優位にする効果があります
  • 「一緒に歌ってみましょうか?」「鼻歌でも大丈夫ですよ」と、無理なく楽しめる提案

訪問看護で取り入れるヒント

1. 活動のきっかけはとにかくシンプルに

  • 「今日は秋らしい色で塗ってみませんか?」
  • 「今の気分に合う曲、いっしょに聴いてみませんか?」
  • 完成させることではなく、感じる時間を持つことを目標に

2. 本人の興味や懐かしさを軸に

  • 子どもの頃の遊びや、昔好きだった音楽・色・作品などからアプローチ
  • 「昔よくやっていた習字をやってみたい」などの声が出れば、その思いを尊重した活動提案

3. 完成品は共有・記録の材料にも

  • できあがった塗り絵や作品は、本人の成長記録・自己表現の成果として活用できます
  • ご家族に見せたり、記録に残すことで、本人のやった実感につながります

まとめ

芸術活動は、心に働きかける静かなケアです。
秋という季節の力を借りながら、「今、ここにいる私」をそっと表現できる場所をつくること。
それが、精神科訪問看護においても、その方らしい生き方を支える大切な関わりになるはずです。

無理なく、楽しく、気楽に取り入れられる芸術の秋。
今年は、そんな秋を皆様と一緒に過ごしてみませんか?

秋の衣替えと感覚過敏:利用者の「快適」を守る衣類選び

~着るものの違和感が、心の不安につながらないために~

はじめに

涼しい風が吹き始め、そろそろ衣替えの季節。
しかし、私たちが何気なく行う衣替えも、感覚過敏や衣類へのこだわりが強い方にとっては大きなストレスになることがあります。

「チクチクして落ち着かない」「タグが気になって着替えたがらない」こうした反応には理由があります。
この記事では、秋の衣類による不快感をできるだけ軽減し、その人にとっての快適を守る工夫を訪問看護の視点からお伝えします。

感覚過敏と衣替えのストレスとは?

1. 素材の変化による違和感

  • 夏服から秋冬の服へと切り替わると、肌ざわり・重さ・通気性が大きく変わります。
  • 感覚過敏のある方は、布の質感・縫い目・タグ・締め付け感などに強く反応し、不安や混乱につながることもあります。

2. 「決まった服しか着られない」ことも

  • 「この服しか着たくない」「毎日同じ服じゃないと落ち着かない」といったこだわりは、自分の世界の安心材料のひとつである場合があります。
  • 無理に新しい衣類に変えようとすると、パニックや拒否反応を招くこともあるため注意が必要です。

秋の衣類選び・切り替えのポイント

1. 素材は「やわらかく・軽く・通気性のよいもの」を優先

  • 綿・モダール・テンセルなどの柔らかくて摩擦の少ない素材が安心されやすい
  • ウール・ポリエステル混合などは、チクチク感が強く避けられる傾向あり
  • 裏地なし・タグなし・平縫いタイプの衣類を選ぶとより快適に

2. 薄手+重ね着のスタイルがおすすめ

  • 一気に厚手の服に変えるより、薄手の長袖+カーディガンなどのレイヤードで調整
  • 「気温に合わせて1枚ずつ脱げる」スタイルが、本人の快適を守りやすい

3. 衣類の慣れを大切に

  • いきなり新しい服に変えるのではなく、夏服と秋服を少しずつ混在させて慣らす期間を設ける
  • 「部屋では夏服、外出時だけ秋服」といった段階的な切り替えが◎
  • 本人のお気に入りの色・柄を選ぶことも、切り替えのきっかけになります

訪問看護でできる支援と声かけ

1. 衣類の不快感を観察する視点

  • 着替えを嫌がる、落ち着かない様子、かゆみを訴えるなどがあれば、素材やフィット感に原因がないかを確認
  • 「最近の服、気持ちよく着られてますか?」とさりげない確認の声かけ

2. ご家族・支援者との情報共有

  • 本人が服にこだわる場合、「この服だけは残しておいてください」といった配慮を提案
  • 新しい服を選ぶ際には、素材や肌ざわり重視の視点を共有
  • 「肌触りが合わなくて不安定になることもあるんです」と事前に説明することで誤解を防ぐ

ご本人の快適を尊重することが第一歩

衣服は毎日肌に直接触れるものです。
だからこそ、その人の感覚に合った服選びは、精神的な安定にも大きな意味を持ちます

「本人が落ち着ける服」「安心できる服」を中心に、季節の変化に無理なく付き合っていく。
訪問看護ステーションharu style・グループホームなつでは、その小さな変化に寄り添う支援を大切にしていきたいと思います。

寒暖差疲労とメンタルの揺らぎ:秋の体調管理ポイント

~「気分が不安定…」その背景に温度差があるかもしれません~

はじめに

朝晩の冷え込みと、日中のポカポカ陽気、10月は、一日の中でも気温差が大きくなる季節です。
この寒暖差は、実は私たちの自律神経に負担をかけ、心と体に影響を及ぼす要因のひとつです。

精神疾患をお持ちの方にとっては、「なんとなく不安」「疲れが抜けない」「気分が落ち込みやすい」といった症状が、この時期に強まることもあります。

この記事では、寒暖差が引き起こす“寒暖差疲労”とメンタルへの影響、そして訪問看護や日常でできる対策についてご紹介します。

寒暖差疲労とは?

寒暖差疲労とは、日中と朝晩の気温差に体がうまく対応できず、自律神経が疲れてしまう状態を指します。

◆ 秋の典型的な症状

  • 疲れやすい
  • 頭痛・肩こり・めまい
  • 不安感やイライラ、気分の落ち込み
  • 睡眠の質の低下(中途覚醒・寝つきの悪さ)

特に10月は、夏から冬への「季節のはざま」にあり、身体が環境に適応しきれないまま疲労が蓄積しやすい時期です。

自律神経とメンタルの関係

自律神経は、呼吸・血圧・体温・消化などを調整する働きがあると同時に、感情の安定や精神状態とも深く関係しています。

寒暖差によって交感神経と副交感神経の切り替えが乱れると、

  • 「体が休まらない」
  • 「頭がさえて眠れない」
  • 「ちょっとしたことで不安定になる」
    といったメンタルの揺らぎが起こりやすくなります。

訪問看護の現場でよく見られる変化

  • 「寝ても疲れが取れない」
  • 「日中ぼーっとして動き出せない」
  • 「涼しくなってから、気分が沈みがちになってきた」
  • 「朝夕になると不安が強まる」

こうした声が10月に増えることは珍しくありません。
だからこそ、体調の揺らぎを気持ちのせいではなく季節のせいと捉える視点が大切になります。

セルフケアと支援のポイント

1. 服装の調整で体温を守る

  • 薄手の上着・ストール・レッグウォーマーなど、こまめな温度調整ができる服装を
  • 足元や首元を冷やさない工夫が、自律神経の安定にもつながります

2. 朝の光を浴びて体内リズムを整える

  • 起床後すぐにカーテンを開けて光を取り入れる
  • 外に出られない日も、室内で明るく過ごすだけでセロトニン(幸福ホルモン)の分泌を促せます

3. 食事と水分補給で内側から整える

  • ビタミンB群・マグネシウム・鉄分を意識(例:納豆、卵、バナナ、海藻、豆腐など)
  • 夏と違って喉の渇きを感じにくくなるため、意識的な水分補給(常温がおすすめ)を忘れずに

4. 軽い運動と深呼吸で自律神経をサポート

  • 無理のない範囲で、散歩・ストレッチ・ラジオ体操などの軽い運動を
  • 寝る前に腹式呼吸を行うことで、心身の緊張をゆるめる効果も期待できます

訪問看護でできる関わり方

  • 服装や室温、飲食の傾向など、季節の変化に合った生活スタイルになっているかチェック
  • 「最近よく眠れていますか?」「疲れが取れていますか?」と、気分だけでなく体調にフォーカスした声かけ
  • 必要に応じて、主治医やご家族と気分変動や日常生活への影響を共有

まとめ

寒暖差による心身の疲労は、誰にでも起こりうる自然な反応です。
特にメンタルに不調を抱える方にとっては、ちょっとした気候の変化が大きなストレスになることもあります。

大切なのは、「なんとなく調子が悪い」の背景にある季節のサインに気づくこと。
訪問看護ステーションharu style・グループホームなつでは、その気づきをきっかけに、その人らしいリズムと安心を取り戻す支援を心がけていきたいと思います。

訪問看護ステーション haru style は開設6周年を迎えました

~皆様とともに歩んだ6年、感謝の気持ちを込めて~

皆様へ

こんにちは。
いつも訪問看護ステーション haru style をご支援いただき、誠にありがとうございます。

このたび、私たちharu styleは令和7年をもちまして、開設6周年という節目を迎えることができました。
ここまで歩んでこられましたのは、日々私たちを温かく支えてくださる皆様のおかげに他なりません。スタッフ一同、心より感謝申し上げます。

6年間の歩み

開設以来、私たちは「寄り添う看護」を大切にし、患者様一人ひとりの生活や心の声に耳を傾けながら、安心と信頼の訪問看護を提供してまいりました。

この6年間で、さまざまな出会いがあり、多くの学びと成長を重ねてきました。
日々の訪問の中で感じるのは、ご本人の頑張り、家族の支え、地域の力。私たちはその一部でありたいと、いつも願ってきました。

「ありがとう」の言葉に励まされ、「また来てね」の声に背中を押されながら、6年という月日を過ごすことができました。

今後に向けて

6周年を機に、私たちは新たな気持ちで次のステージへと歩み出します。

これまで以上にご利用者様の生活に寄り添い、“安心して暮らし続けられる地域社会”の一翼を担える存在でありたいと考えています。
看護の質のさらなる向上に努めるとともに、新たなチャレンジにも積極的に取り組み、変化に柔軟に対応できるチームを目指してまいります。

感謝を胸に、これからも

6年という年月の中で得た信頼と経験を糧に、訪問看護の専門職として、そして地域の一員として、一層の努力を続けてまいります。

これからも、皆様のご期待に応えられるよう、真摯な姿勢で看護に取り組んでまいりますので、変わらぬご支援・ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

皆様のご健康とご多幸を、心よりお祈り申し上げます。

令和7年10月1日
訪問看護ステーション haru style スタッフ一同

季節の変わり目と服薬管理:注意すべき点

~気候のゆらぎに負けない服薬サポートを~

はじめに

季節の変わり目になると、「なんとなく体がだるい」「眠れない」「気分が落ち込む」といった声が多く聞かれます。
このような心身の変化は、気温や湿度、日照時間などの外的要因によって引き起こされる「季節性の体調不良」のひとつです。

精神疾患をお持ちの方にとっては、この季節の変化が服薬のリズムや体への影響に大きく関係することもあります。
この記事では、季節の変わり目に起こりやすい変化と、それに応じた服薬管理の注意点や訪問看護での工夫について解説します。

季節の変わり目に起きやすい体調の変化

1. 自律神経の乱れ

  • 春や秋は寒暖差や気圧の変動が激しく、自律神経のバランスが崩れやすい時期です。
  • この影響で、睡眠障害・胃腸の不調・倦怠感・情緒不安定などの症状が出やすくなります。

2. 薬の効き方や副作用の感じ方が変わることも

  • 体温や発汗量が変わることで、薬の吸収や代謝が変化し、効果が強く出たり、逆に弱まることも。
  • 特に眠気・脱水・便秘・動悸などの副作用が強く感じられるケースもあります。

3. 服薬のタイミングがずれやすい

  • 日照時間の変化や生活リズムの乱れにより、服薬を忘れる・遅れる・間違えるといった事例が増えがちです。
  • 季節の変わり目は、心身の“ゆらぎ”が出やすい時期だからこそ、服薬管理の丁寧さが求められます。

服薬管理のポイントと対応策

1. 自覚症状に頼りすぎない

  • 「調子が良いから薬を減らしてもいいかも」など、自己判断での減薬・中断は非常に危険です。
  • 季節変動に伴う気分の揺れは一時的なものも多いため、継続的な服薬が安定につながります

2. 環境の変化による誤薬リスクに注意

  • 旅行・外出・家族構成の変化(例:夏休み・年末年始)などで、服薬環境が変化する時期はミスが起きやすい
  • 服薬カレンダーやピルケース、タイマー付きアラームなどの活用を検討しましょう。

3. 副作用・効果の変化に敏感になる

  • 同じ薬でも、気温や活動量の変化によって作用が異なることがあります。
  • 「最近、便秘がひどくなった」「いつもより眠気が強い」などの変化を感じたら、早めに主治医や薬剤師に相談を。

訪問看護でできるサポート

1. 季節の変わり目に合わせた体調チェック

  • 「最近の気温の変化で何か感じていることはありますか?」という問いかけで変化への気づきを促す
  • 表情・動作・言葉づかい・睡眠・食事の変化などを丁寧に観察することも重要です

2. 薬の保管・管理状態の確認

  • 湿気や温度の影響を受けやすい薬剤は、保管場所や使用期限にも注意が必要です
  • ご本人が管理している場合は、「どこに置いているか」「いつ飲んでいるか」を一緒に再確認

3. 医師・薬局との情報連携

  • 訪問の中で気づいた変化や、服薬に関する不安は、早めに医師や薬剤師に伝える
  • ご本人に代わって確認することも、訪問看護師の重要な役割のひとつです

ご家族・支援者へのアドバイス

  • 季節ごとに「薬の飲み忘れが起きやすい時期」があることを一緒に認識しておく
  • 「今日は気温が下がったから、体調に影響がないか見守ってくださいね」といった具体的な声かけを共有
  • 「少しの変化も大切なサイン」として受け止め、報告しやすい雰囲気づくりを心がけましょう

まとめ

季節の変わり目は、心も体も不安定になりやすい時期です。
だからこそ、服薬の安定が“安心の軸”となるよう、丁寧な管理とサポートが求められます。

ご本人が安心して日々を過ごせるよう、季節の変化に寄り添いながら、服薬にまつわる小さな気づきを支援につなげていくことが大切です。

秋の夜長と不眠:睡眠環境の整え方

~“眠れない秋の夜”をやさしく乗り切るために~

はじめに

「秋の夜長」という言葉がありますが、実際に秋になると「眠りが浅い」「夜中に目が覚める」「なかなか寝つけない」といった不眠の相談が増える季節でもあります。

特に精神疾患を抱える方や生活リズムが崩れやすい方にとっては、気温・日照時間・気圧の変化が睡眠に大きく影響し、メンタルの不調に直結することも少なくありません。

今回は、秋の夜長に起こりやすい不眠の原因と、その対策としての睡眠環境の整え方やセルフケアの工夫についてご紹介します。

秋に不眠が増えやすい理由

1. 日照時間の短縮による体内時計の乱れ

  • 秋は急激に日の入りが早くなるため、体内時計が乱れやすくなります。
  • メラトニン(眠気を促すホルモン)の分泌リズムがずれ、眠気が早すぎたり遅すぎたりすることも。

2. 気温差による身体へのストレス

  • 朝晩の寒暖差が激しくなり、自律神経が乱れやすくなることで、寝つきの悪さや途中覚醒が増加
  • 寝具や室温が合わず、「眠りに集中できない」という状態になりやすい

3. 「静かすぎる夜」が不安感を強める

  • 夜の静けさの中で、考えごとや不安が膨らみやすく、過覚醒(頭が冴えて眠れない状態)につながることも

不眠を和らげる睡眠環境の整え方

1. 温度・湿度を秋仕様に見直す

  • 寝室の温度は18〜22℃が理想。足先の冷えにはレッグウォーマーや湯たんぽを
  • 加湿器を使い、湿度は50〜60%前後を保つことで、呼吸がしやすくなります

2. 寝具の調整

  • 夏用の寝具を使い続けていないかチェック
  • 掛け布団は軽くて保温性のある素材がおすすめ。重すぎる布団は圧迫感で眠りを妨げることも

3. 照明・音・香りの工夫

  • 就寝1時間前からは間接照明や電球色ライトに切り替える
  • ホワイトノイズ(静かな環境音)やヒーリング音楽を活用
  • ラベンダーやカモミールなどのリラックス系アロマも効果的

不眠に悩む方へのセルフケアのヒント

  • 寝る前のスマートフォン・テレビ・強い光を避ける(ブルーライトカット
  • 就寝前は考えごとを紙に書き出すなど、頭の中を整理しておく
  • 「眠ろうと頑張らない」「布団に入る時間を固定する」など、プレッシャーを和らげる視点が大切
  • 寝つけないときは、一度布団から出て軽くストレッチや読書などを行う

訪問看護でできる支援のポイント

  • 睡眠の記録や夜間の様子についてヒアリングし、リズムの傾向を把握
  • 「〇時になったら部屋の明かりを落とす」など、就寝前の行動パターンを一緒に整える
  • ご本人の好みに合った音楽やアロマなど、自分だけの入眠ルーティンを提案
  • 必要に応じて、主治医に服薬内容や生活状況を報告・相談

ご家族・支援者へのアドバイス

  • 「夜中に何度も起きてしまう」「なかなか眠れない」ことを甘えではなく体の反応として受け止める
  • 寝つけない時に無理に寝かせようとせず、安心できる声かけや対応
  • 日中の活動量や光の取り入れ方(午前中の散歩など)も大切です

まとめ

秋の夜長は、心を落ち着ける一方で、不眠に悩む方にとってはつらさが増す季節でもあります。
眠りは、心と体の回復を支える大切な時間です。環境を少し整えるだけでも、睡眠の質は大きく変わってきます。

訪問看護ステーションharu style・グループホームなつでは、その方の生活スタイルに合わせた現実的でやさしいサポートを心がけ、安心して眠れる夜を共につくっていきたいと考えています。